東京国立近代美術館で開催されている「没後50年 鏑木清方展」にいってまいりました。
閉館間際の人気の少ない展示室で「築地明石町」を見つめていたら、あまりの美しさに頭がぼーっと…。
ふわふわとうわの空で歩いた帰り道には、夢のような噴水に遭遇し…。
何とか現実世界に戻ってこられたのは、奇跡だったかもしれません(^^;)。
美人画の傑作としてあまりにも名高い「築地明石町」。
数年前、長らく所在不明だった(ということはその時まで知らなかったのですが)この絵が発見され、近代美術館に収蔵された…というニュースをききました。
しばらくして一般公開があり、初めて実物を見たときの新鮮な感動は忘れられません。
想像していたよりずっと繊細で、透き通るような雰囲気。そしてディテールの細やかさと言ったら…。
鏑木清方の世界観にすっかり魅せられてしまったのでした。
それ以来の、再会です。
うかがったのは、千鳥ヶ淵の桜がすっかり散った頃…。
平日の午後でしたので、人出は少なめ。
日時指定予約をしていったのですが、当日券でも待たずに入れるようでした。
所蔵作品展のほうにも見たい絵があったので、清方展の前に、まずはそちらから…。
跡見玉枝「桜花図巻」です。
(撮影可でした)
全25図に、40種類を超えるさまざまな桜が描かれているそうです。
日本のボタニカルアート…。
巻物に仕立てられているところがまた素敵です。
特徴をとらえた、細やかな美しさ。
1枚1枚見入っていたら、あっという間に時間がたってしまい、あわてて清方展へ(^^;)。
没後50年の回顧展ということで、清方の画家としての思いを紐解くような、見ごたえのある展示でした。
ディテールが楽しい「明治風俗十二ヶ月」や、初公開という「雪粉々」など、素晴らしかったです…。
「ためさるゝ日」という双幅の絵を楽しみにしていたのですが、見つからない…と思ったら、展示替えとのこと。
もっと早く来ればよかった…。いつもながら詰めのあまい私です(^^;)。
その代わり…。夕方、人のまばらになった展示室で、「築地明石町」をゆっくり堪能することができました。
「新富町」「浜町河岸」との3部作ではありますが、やはり何といっても…。
見れば見るほど、引き込まれるような美しさです。
今回のリーフレットの一部分▼
描かれているのは、清方の記憶のなかで理想化された「明治期の明石町」なのだとか…。
白く霞んだ遠くの帆船や、薄い水色の洋風の柵にからまる、萎れはじめた朝顔。
佇むのは、すっきりした小紋に黒い羽織をかさねた、しなやかな立ち姿の女性。
ほそいほそい後れ毛が風になびき、ひんやりした空気が伝わってくるようです。
伏し目がちの涼やかな瞳は、いったい何を見ているのか…。
感動のため息を何度ついたことでしょう。
閉館時間になり、美術館の外に出ても、まだ夢心地で現実世界になじめず(^^;)。
すぐに地下鉄には乗りたくなくて…。
東御苑はもう閉門していたので、お堀端をまわって東京駅に向かうことにしました。
そういえば「時計回り」でしたが、歩くぶんには良いのですよね?
柳の若葉がきれいでした。
途中で振り返ると、八重桜の向こうに、先程までいた近代美術館が見えました。
和田倉門に着く頃には、だんだん日が暮れて…。
ちょうど噴水が上がる時間に行き当たりました。
ほの暗い夕暮れ時の噴水、夢のようにきれいでした。
水音をきいているうちに少しずつ正気をとり戻し…。
お仕事帰りの方々に混ざって東京駅に向かい、いつもの京葉線で無事に帰宅しました(^^;)。
ふだんから地に足がついているとは言えず、何かというと、うっとりぼんやりしている私ではありますが…。
今回は自分でもおどろくほど「遠くに行って」しまいました。
初めてみたときはこれほどではなかったので、何か波長が合ってしまったのでしょうか?
あの眼差しが、心のどこか深くに響いてきて…。
築地明石町、ただものではありません。
これから行かれる方は、くれぐれもお気をつけくださいね(^^;)。